最近読んで良かった本のご紹介🎵
主にミステリばっかり読んでるのだけど、毛色が違う上に非常に感銘を受けたので…。

「前世への冒険ールネサンスの天才彫刻家を追って」森下典子
初出は1995年だが、文庫化、更に再文庫化と人気があるよう。新聞の書評欄で紹介されていたのをきっかけに図書館で借りてみたらば、これが下手なミステリそこのけの面白さだったんである!
前世が見えるという女性のもとへ作家森下典子が取材に行くと、「あなたの前世はルネサンス期に活躍した彫刻家」だと言われる。その女性の言うことの裏取りに作家はわざわざフィレンツェまで出向くことに。
作家自身も最後まで「前世」というものが本当にあるかどうかは明言していない。やはり荒唐無稽に思われるからか。ただ、フィレンツェまで出向くと女性の言ったことが逐一当たっていたのである。日本で文献だけを調べていても分からないこと、あるいは一見外れていることが、現地に行ってみると実は当たっていたということがあったのだ。
彫刻家の名はデジデリオ。ポルトガルの枢機卿の墓碑に彫った枢機卿の彫像が彼の作品だと女性は言うが、どれだけ調べても違う人間の作品としか出てこない。結局フィレンツェで調べると、紆余曲折の末、教会関係者しか見れない資料によって実はデジデリオが関わっていたということがわかったのである。
そんな具合に、女性の言ったことが次々当たるようにも思えるが、作家自身は「女性はどこかで文献を見たのでは」「自分が当たっていることのみを無意識にフォーカスしているのでは」と疑惑は拭えない。
デジデリオは37歳で早逝し、墓の場所も今となっては分からない。
生まれ変わりである作家自身はデジデリオ生誕の地(と言われているところ)やゆかりの地を訪ねても特に記憶がある訳ではない。そもそもキリスト教に輪廻転生の概念は無い。ではなぜこれほどまでに惹かれるのか?
「前世」というものは人を惹き付ける何かがある、ということは確信できる。
もう少し写真を多用すれば(デジデリオの作品やフィレンツェ、ポルトガルの景色など)、紀行本としても面白かったのでは。作品の写真(2つほどあるが小さくて見えにくい)やフィレンツェの街並みなどの写真があれば、もっと歴史の重みやデジデリオが実在の彫刻家であるという深みが増したのでは、とそこだけが残念。とはいえ、一緒にフィレンツェへ冒険の旅に出られた感がして楽しいのも事実。前世ではないにせよ、旅に目的を持って出かけるのも悪くないなぁと。作家と一緒に達成感の得られる、誠に稀有な感覚を得られる本だったので、ご興味のある方は一読をお薦めする。

